■史上初のAWACS撃墜例か
ロシアによるウクライナ侵略戦争が長期化するなか、2024年1月14日、今後の航空戦に影響を与えるであろう重大な出来事が起きました。
ウクライナ軍が、ロシア空軍の早期警戒管制機(AEW&C)であるA-50「メインステイ」を撃墜したと公式に発表したのです。
A-50は機体上部に大型のレーダードームを搭載し、空飛ぶ航空戦司令部として機能します。
別名「空中警戒管制機(AWACS)」とも呼ばれ、価格は約400~500億円と高価です。ロシア空軍には9機しかなく、そのうちの1機が失われたことになります。
早期警戒管制機は航空戦の趨勢を左右しかねない重要な機体です。
最大で400~600kmのレーダー視程を有し、敵の攻撃が及ばない戦線の後方でパトロールしながら航空戦を指揮します。
これまで早期警戒管制機が攻撃を受けた事例はなく、今回が史上初めての被撃墜となりました。
本来、困難であるはずの後方に存在する早期警戒管制機に対する攻撃を、ウクライナ軍がどのようにして成功させるに至ったのかは現在のところ不明です。
一説によると、ロシア空軍の同士討ちという可能性もあるとか。
いずれにせよ、ロシア空軍にとっては海軍の黒海艦隊旗艦「モスクワ」沈没に匹敵する開戦以来の大失態といえるでしょう。
■これ以上A-50を失えないロシア空軍
今回のA-50被撃墜が、この戦争にすぐさま影響を与えるとは考えにくいですが、ウクライナ周辺の低空域における航空優勢、
いわゆる制空権の掌握においてロシア側が不利になる可能性は多分にあります。
早期警戒管制機が持つ最大の役割の1つは「地球の丸み」を克服することです。
地上に配置された防空レーダーは、水平線(地平線)より下に存在する、すなわちその向こうに位置する航空機の探知ができません。
これは海面(地面)の影になってしまうからです。
この影響は意外と大きく、たとえば人間の頭と同じ高さに置かれたレーダーアンテナは、わずか5kmで水平線の下の領域、すなわち探知不能エリアができてしまいます。
早期警戒管制機は高い位置から見下ろすことによって、この問題を解決できます。
たとえば高度1万mを飛行すれば水平線の位置を378km先へ追いやることができます。
つまり、ロシア側はウクライナ本土の低空をもっぱらA-50の監視に頼っていると言えるでしょう。
ロシア空軍はこれ以上のA-50の損失を防ぐために、今後は同機をより戦線後方へと下げてパトロールさせるでしょう。
仮に現在より100km後方に下げたとすると、ロシア側は100km分の低空監視網を失うことになります。
■間もなく実戦投入か? ウクライナのF-16
また、監視だけでなく、攻撃能力も低下します。
ロシア空軍は最大射程400kmの高性能地対空ミサイルS-400を保有しており、ウクライナの空の大半を攻撃範囲に収めています。
しかし、S-400は自前の射撃用レーダーでは、前述した地球の丸みに関する問題から低空を飛ぶ航空機を照準することができず、
ミサイルの最大性能を発揮するためにはA-50のレーダー支援が必須です。
よってA-50を後方に下げたら、その分S-400がカバーできる範囲も減ると考えられます。
2024年春にはウクライナ空軍へF-16「ファイティングファルコン」戦闘機の配備が始まりますが、A-50の後退はF-16の性能を発揮する上で有利になります。
F-16は空戦能力だけでなく、対地攻撃や地対空ミサイルの破壊能力にも優れているので、もしF-16による作戦が自由に行えるようになった場合、
地上戦へ影響を与えることも十分に考えられるでしょう。
また、低空を飛翔し接近する巡航ミサイルはこれまでにおいてもロシア海軍司令部や潜水艦を撃破するなど戦果を上げていますが、
ロシア側はその迎撃も一層困難となる可能性も考えられます。
ロシア側はS-400とA-50の組み合わせでF-16を封殺するつもりだったようですが、A-50を前進させると再び撃墜されるリスクを負うことになります。
ちなみに、F-16は射程100km以上あるAIM-120D「アムラーム」空対空ミサイルを使用可能で、これもA-50にとって脅威となります。
いずれにせよロシア空軍はまもなく控えるF-16の実戦投入にそなえ、何らかの手段を用意しなくてはならないでしょう。
たとえばA-50の代わりにMiG-31やSu-35といった大型戦闘機にレーダー監視をさせるという方法などが考えられます。
引用元: ・【戦況分析】ロシア一気に劣勢へ? 「早期警戒管制機」撃墜の深刻な影響 “史上初”の大失態 [ごまカンパチ★]
またこいつか
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